これを解き明かすには「こんにちは!」なる表現を、先ずは文章であらわすことが必要です。つまり「こんにちは!」が言わんとするところは、「これから訪れる一日が貴方にとって、あるいは君にとって、どうか良い一日であることを私は心より願っておりますよ」ということなのです。これを敢えて英語で表現してみますと、I
wish (for) you good afternoon!、あるいはI
wish your good afternoon!、またはHave
a nice day!となります。さて、これをドイツ語に改めてみますと、wishはwünschenであり(for)
youはIhnenまたはdir、さらにgood
afternoonは形容詞のgutとTagを用いて表現し、又、今一つの文章であれば、haveはhabenであり、a
nice dayはそれぞれeinと形容詞のschön及びTagを用いればよいわけです。
ところがドイツ語はここからが些か厄介で、皆さんは頭を悩ませはじめるわけです。実は、ドイツ語の世界には他動詞(transitiveVerben)と呼ばれるものがあり、この動詞は英語でいう直接目的語、ドイツ語では4格目的語(Akkusativobjekt)と呼ばれる目的語を必ず要求するといった不文律があるのです。 ここで用いられているwünschen「願う」なる動詞は、まさにその他動詞なのです。したがって、目的語となるべき形容詞のgutとTagのいずれもを4格に改めなければならないわけです。又、haben「手元にもつ」も他動詞ですので、同じようにeinをはじめ、形容詞のschön及びTagともに、これまた4格にする必要があるわけです。
そこで強変化と混合変化表に照らし合わせてみると、それぞれ4格はgut-en Tag4、あるいはeinen schön-en Tag4となることが分かり、これを完全な文章で表現してみるとIch wünsche Ihnen3(dir3) guten Tag4!、あるいはHaben Sie (bitte) einen schönen Tag4! (祈願的要求表現と呼ばれる接続法第1式の表現ですが)、さらにはHätten Sie doch einen schönen Tag4! (外交的表現と呼ばれる接続法第2式の表現です)となるわけです。 しかし、日常ではこのような長い文章であらわすのではなく、簡素化してguten Tag4!、einen schönen Tag4!と、お互いに挨拶を交わしているわけです。
昼の挨拶のみならず朝であればIch
wünsche Ihnen3(dir3)
guten
Morgen4!、夕刻であればIch
wünsche Ihnen3(dir3)
guten
Abend4!、でも床につく時だけはIch
wünsche Ihnen3(dir3)
gute
Nacht4!と語り掛けて一日に別れを告げ、夢の世界へと誘われるわけです。
尚、「お休みなさい!」の語尾だけがなぜ
-eとなるのかは、Nacht「夜」が女性名詞だということでお分かりになると思います。
さらに、週末ともなるとドイツの方々はIch wünsche Ihnen3(dir3) schönes Wochenende4! 「素敵な週末をお過ごしください!」と挨拶を交わしますが、これはWochenendeが中性名詞であることから、4格の語尾が -esとされるわけです。尚、挨拶に対しては、大方は同じ言葉を投げかけ合うのが一般的ですが、schönes Wochenende4!などのような挨拶に対しては、Danke, gleichfalls!「ありがとう、あなたも(君も)同様に心安らかな週末をお過ごしくださいね!」と応えるのが普通です。
ドイツのラジオやテレビ放送を聴いておりますと、番組を終了するにあたってアナウンサーの口から発せられるお別れの言葉は千差万別ですが、彼らの誰もが口にする言葉を文章体であらわしますと、まさしくIhnen3 wünsche ich noch einen angenehmen Abend4!「くつろいだ夜長をお過ごしください!」などのように表現していることに気がつかれると思います。
このように文章で相手に挨拶をすることは、何ともいえぬ心地よさと人の温もりを感じさせてくれるものではないでしょうか。 間もなく復活祭を迎える季節になりますが、その時期になるとよく耳にするのがfrohe Ostern4!、あるいはschöne Osternferien4! 「素敵な復活祭(の休暇)をお迎えください!」です。これを文章で表現すると、Ihnen3(Dir3) wünsche ich frohe Ostern4/ schöne Osternferien4!となります。ここではOsternとOsternferienのいずれもが複数形として扱われているので、それ相応の4格の変化語尾が付けられているわけです。
なるほど名詞の文法性を覚えるという難題は残るものの、何はともあれこの僅か5つの -er, -es, -em, -en, -eの語尾がそれだけで、一つ一つの言葉の働きを明確に区別させる力を発揮するのですから、何とも不思議なものですね。ドイツ語の語尾とはなんとも合理的であり、又、説得力を有しているのですから驚きです。
そ の昔、日本で教鞭を執っていた頃、授業で新しい発見をするたびに目を丸くしていた数多くの高校生や大学生のことを思い出します。彼らの誰もが、ドイツに 夢を馳せ、私自身も彼らと共に学べる喜びと感動を共有できた、何とも夢のようなよき時代であったように思います。海外、殊にドイツ語圏に学ぶ日本の子ど もたちも、そこにいるからこそ学べる喜びと感動を是非知って欲しいと願うばかりです。
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